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湖東平野地区事業

 愛知川沿岸土地改良区での農業用水対策は、1950年(昭和25年)に滋賀県愛知川総合開発の調査が始まり、1952年(昭和27年)に国営愛知川事業が着手され、その後永源寺ダム建設によりスタートしました。
 ダム湖内には3集落213戸の水没家屋があり、大昔より永く住み慣れたふる里を立ち退きして頂くことに格別の理解と協力を頂き、1972年(昭和47年)に一万農家が待ち望んだ永源寺ダムが完成し、翌年度から受益地の一部に送水が始まりました。同じくしてほ場整備は急ピッチで進み、品質改良や営農形態の変化と共に近代農業が始まり、今日まで近江米の産地湖東平野2市2町の水田7,000haは、守られてきました。
 農業用水は地下水をかん養し、上水や工業用水の源となるほか、防火用水や生活用水、親水空間の保全などにも利用されています。また、水田は、洪水時には貯水池の役割を果たし、洪水被害の軽減にも寄与しています。このように、農業用水は地域において、多面的な役割を持ちあわせています。
 ところが、水田の汎用化に伴う用水量の増や、営農形態の変化により水需要が増大し、さらに地球温暖化の影響による小雨化や猛暑などで用水不足となっていますが、近江米の美味しい米づくり、売れる米づくりには安定した用水が必要です。
 一日も早く用水不足の解消を図り安心して水田農業を営むことが出来るように本事業が計画されました。

湖東平野における水田のめぐみ ~適切な水循環と潤いある地域づくり~

  • 湖東平野において安定した用水を確保し、老朽化した農業水利施設の改修や水管理施設の整備などを行うことにより、愛知川流域の特徴でもある地表水と地下水を組み合わせた適切な水循環を将来にわたり保全していくことが大切です。
  • このことにより安定した営農が維持され、湖東地域の農業用水が有している環境・景観・生活等の機能の維持・増進につながっています。

  • 湖東地域には、永源寺ダム、河川、ため池、用水路などの多様な水環境が形成されています。
  • 農業用水は農地を潤し、一部は地下水を涵養し、一部は排水路を経て河川に還元されています。
  • これら涵養された地下水や還元水は農業用水として再利用し、上水及び工業用水にも利用されるなど、水の循環利用が図られています。
  • また、水田には洪水を防ぎ、土の流出を防止し、水田からの蒸発により空気を冷やす効果があり、市街地での夏の気温が高くなるのを防いでいます。

洪水を防ぎます

畦畔に囲まれている水田は雨水を一時的に貯留し、時間をかけて徐々に下流に流すことにより洪水の発生を防止・軽減する働きがあります。
 

暑さをやわらげます

農地で栽培される作物は蒸発散によって熱を吸収し、気温を下げる働きがあります。特に水田地帯では、水面からの水分の蒸発や作物からの水分の蒸散により空気が冷却されます。

土の流出を防ぎます

水田に張られた水は、雨や風から土壌を守り、侵食を防ぐ働きがあります。
 

地下水をつくります

水田に利用されるかんがい用水や雨水の多くは地下に浸透し、流域の地下水となり、良質な水として下流地域で活用される働きがあります。

生き物のすみかになります

水田は適切かつ持続的に管理されることによって、豊かな生態系を持った自然が形成・維持される働きがあります。

豊かな田園や地域景観を継承します

農村で農業が営まれることにより、その周辺の水辺や里山が一体となって醸し出す独特の雰囲気を有する景観が形成されます。

1. 湖東平野地区における事業計画のあらまし

 本地域では国営愛知川土地改良事業(S27~S58)及び県営等関連事業(S43~H15)により永源寺ダム、愛知川頭首工、揚水機、幹支線水路等の農業用水利施設が整備されましたが、造成後30年以上が経過し、老朽化の進行とともに、近年の少雨化傾向による河川流量の減少や営農形態の変化による水需要の増大により用水不足が発生し、隔日送水などの節水対策が実施されてきています。
 このため、幹線用水路等の改修を行うとともに、水源施設の整備を行い、農業用水の安定供給と維持管理の軽減を図ります。

2. 湖東平野地区の課題と対応

農業用水の確保

近年の少雨化傾向により河川流量が減少し農業用水が不足しています。

ニーズに応じた用水供給

地区内の用水需要が昼間に集中している現状です。

用水路の保全

施設の老朽化により用水路が漏水しています。

水路下流への安定した送水

開水路の延長が長く続く地域では、下流に水が届きにくい水路構造となっています。

管理費の軽減

揚水機等の動力系水源による電気代が毎年多く発生しています。

3. 事業の手続き

土地改良事業を実施するに当たり、受益者(※3条資格者)の皆様の3分の2以上の同意が必要です。
事業着手までの大まかな流れ(国営事業の場合)

① 地域住民の意見聴取のための事業計画の概要の公告及び縦覧

申請人(土地改良法第3条に規定する資格を有する15人以上の者)は、地域住民の意見を求めるため、必要な事項を公告し、事業計画の概要を縦覧します。

② 事業計画の概要等の公告と同意徴集

申請人は、事業計画の概要等を公告し、3条資格者から同意を徴集します。

③ 施行申請

申請人は、申請書に概要の公告をした事項を記載した書面、同意があったことを証する書面等を添付し、滋賀県知事を経由して国(農林水産大臣)に事業施行の申請を行います。

④ 適否の決定及び事業計画の確定

施行申請を受けた国(農林水産大臣)は、滋賀県知事との協議を経て、適否の決定を行い、適当とする旨の決定をしたときは、事業計画を定めます。

⑤ 工事の着手

国は、事業計画を定めたことを官報公告し、計画書の写しの縦覧等の手続きを経て事業計画が確定した後に、工事に着手します。
※県営事業の場合もほぼ同様の手続きを行います。
※3条資格者とは
 土地改良法の第3条に規定されている土地改良事業に参加する資格のある方のことです。
 具体的には、事業地域内で「自分の所有する農地を耕作している方」や「農業委員会を通し農地を借りて耕作している方」が資格者となります。なお、農地を所有していて耕作していない方でも概要等の公告後5日以内に農業委員会へ届出し、承認されれば資格者となることができます。

4. 事業計画の概要

国営事業
国営事業は平成26年度から実施する予定です。そのうち、永源寺ダム貯水池内掘削は、早期に完了すべき工事(指定工事:基幹施設)として、本事業の早期効果発現を図ります。

1. 国営事業全体計画(国営かんがい排水事業)

(1)永源寺ダム
 地区内で不足する水量を確保するため、永源寺ダム貯水池内を掘削し有効貯水量の増量を図ります。
【貯水池内掘削 38万㎥(土砂部)】
永源寺ダム
貯水池内掘削予定箇所
(2)地下水揚水機
 不足水量を確保するため地下水揚水機を新たに設置し、幹線水路に注水することにより効率的な利用を図ります。
【4幹線水路への注水 注水量の計0.51㎥/s】
既設地下水揚水機
(3)調整池
 調整池を設置して水源として利用するほか、日中と夜間の需給調整、用水到達時間差の調整を図ります。
【6箇所】
(4)用水路更新、補修及び水管理施設の改修
 施設の機能診断調査結果に基づき、対策が必要な施設の更新、補修を行い、施設の長寿命化を図るとともに、漏水による事故を防止します。また、水管理施設を改修し、地区内における効率的な水利用を図ります。
【国営幹線水路更新、補修 L=11km】
【水管理施設改修 1式】
水路内部に侵入した木の根
(蒲生幹線水路)
管水路が破損し地下水が流入
(愛知第二幹線水路)

2. 総事業費

250億円

3. 予定工期

平成26年度~平成34年度(予定)
(※ダム貯水池内掘削は、早期に完了すべき工事(指定工事)であり、工期は平成32年度までを予定)

4. 予定負担割合

区分
市町
農家
備考
基幹施設
70/100
(70.00%)
20/100
(20.00%)
8/100
(8.00%)
2/100
(2.00%)
ダム
一般施設
200/300
(66.66%)
51/300
(17.00%)
18/300
(6.00%)
31/300
(10.34%)
その他

5. 国営事業地元負担金の償還

事業完了の翌年度に一括償還

関連事業(県営事業)
関連事業全体計画のうち、地下水揚水機や用水施設の整備は、県営農業水利施設保全合理化事業により対応します。そのうち、平成26年度からは県営農業水利施設保全合理化事業「湖東平野1期地区」として一部を実施し、事業効果の早期発現を図ります。

1. 関連事業全体計画

(1)地下水揚水機
不足水量を確保するため地下水揚水機を新たに設置します。
【支線水路等への注水 注水量の計1.39㎥/s】
既設地下水揚水機
【うち湖東平野1期地区】
注水量の計1.00㎥/s
(2)用水路等の更新、補修
 県営支線水路の更新、補修を行い施設の長寿命化を図ります。また、支線水路より下流の末端水路は、受益末端まで安定的な用水の供給のため、ほ場に直送可能なバイパス水路を計画しています。
【県営支線水路更新、補修 L=19km】
【末端水路改良(バイパス化)L=11km】
 
 愛知川頭首工では、老朽化の著しいゲート施設の更新整備を行い、農業用水の安定的な取水を図ります。
【1箇所】(ゲート施設改修)
管水路施工例
愛知川頭首工ゲート施設
【うち湖東平野1期地区】
県営支線水路更新、補修 L=7km
末端水路改良(バイパス化)L=11km
 
愛知川頭首工(ゲート施設改修)1箇所
(3)小規模反復利用施設
 地域資源の更なる活用を図るため、地区内の排水路に新たに反復利用施設を設置し、必要水量の確保を図ります。
【6箇所】
地区内既設反復利用施設
(蛇溝)
地区内既設反復利用施設
(蛇溝)
(4)ため池整備
 地域資源の更なる活用を図るため、地区内の利用可能なため池のうち、老朽化が著しい取水設備等の整備を行います。
【10箇所】
整備が必要なため池の例
※赤枠は木樋(取水設備水没)
整備済みため池の例

2. 総事業費

97億円(うち「湖東平野1期地区」34億円

3. 予定工期

平成26年度~(うち「湖東平野1期地区」は平成30年度まで(予定)

4. 予定負担割合(※県営農業水利施設保全合理化事業「湖東平野1期地区」)

区分
市町
農家
備考
県営事業
50/100
(50.00%)
25/100
(25.00%)
10/100
(10.00%)
15/100
(15.00%)
湖東平野
1期地区

5. 県営事業地元負担金の償還

 事業実施年度毎(直入方式)

農家負担額の償還方法

国営事業と県営事業では、農家負担額の償還の時期や方法が異なります。

国営事業

 事業実施中は、毎年度の農家負担相当額を国が立て替えし、事業完了後の翌年度から償還を開始します。湖東平野地区の償還方法は、一括償還(事業完了後に一括で償還)を予定しています。
農家負担額 22億円

県営事業

 毎年度の事業費に応じて、当該年度毎に農家負担金を納入します。(直入方式)
農家負担額 10億円

農家負担額について

  • 農家負担額約32億円(46,400円/10a)に充当するため、積立金や基金を取り崩します。
  • 取崩金を充てても不足する金額は、公庫から低利で借り入れ、約20年程度をかけて返済します。
  • 公庫からの借入金は、土地改良区の運営経費の節減等により、現状賦課金の範囲内で返済する予定です。
本事業の事業負担金は国営事業、県営事業とも新たに追加徴収しない方針とします。

一般計画平面図

地区内用水路等及び永源寺ダム維持管理事業計画の策定について

  • 湖東平野地区の国営及び県営事業実施に伴い、維持管理事業計画の整備が必要です。
    1. 地区内用水路等は、愛知川沿岸土地改良区において、維持管理事業計画書の整備が必要です。
    2. 永源寺ダムは、昭和59年度から管理している滋賀県において、維持管理事業計画書の整備が必要です。

1. 愛知川沿岸土地改良区維持管理事業計画書の内容

【ポイント】
土地改良区が管理している地区内用水路等については、国営湖東平野地区事業計画等に合わせて維持管理事業計画書を整備し、所定の手続きを行う必要があります。

2. 永源寺ダム(滋賀県)維持管理事業計画書の内容

【ポイント】
これまでの永源寺ダム維持管理事業計画書に対して、地積(受益面積)や地域の現況の記載内容について、国営湖東平野地区事業計画の内容に合わせて整備するものであり、所定の手続きを行う必要があります。

3. 手続きの方法

  • 維持管理事業計画書は、土地改良法により整備が義務づけられており、施設の維持管理や賦課金の徴収根拠を明らかにする、最も重要なものです。このため、維持管理の実態に即した維持管理事業計画書を策定し、法令の定める手続によって定める必要があります。
     
  • 具体的には、永源寺ダムは県営土地改良事業(維持管理事業)として、地区内用水路等は土地改良区営土地改良事業(維持管理事業)としてそれぞれ土地改良法(県営は87条の3、土地改良区営は48条)の手続きを行い、それに伴って組合員の同意(署名・押印)が必要となります。
     
  • そのため、国営及び県営土地改良事業(建設事業)「湖東平野地区」の法手続きのスケジュールに合わせて、それぞれの維持管理事業の計画概要等公告や同意徴集を行う予定としています。
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